SIerの将来は?現状のビジネスを軸に今後の動向を考えてみた

システム開発

転職関連サイトでは「SIerからWeb系に転職!」、ひろゆき氏「SIerはヤバい」、多重請負の問題などSIerの未来が危ぶまれているような情報をインターネット上でよく目にします。現状のSIerの状況と未来や今後の動向がどうなっていくのか考えてみたいと思います。

まず結論から

SIer自体は現状維持もしくは拡大を続けて生き残ると考えています。
一方でSIerに協力しているSES専門の企業は徐々に縮小すると考えられます。

SIerは何をしている企業なのか?

そもそもの話ですが、SIerは何をしている企業なのか考えてみます。
大きな意味でいうと「システム開発」をしている企業と括られると思います。
SIerが行っている具体的な業務内容を整理すると大きく以下の3つが考えられます。
①システムを開発してお客様企業に納品する
②お客様企業の既存システムの運用保守を代行する
③自社サービスを開発してお客様に提供する

それぞれ現状と今後を考えてみましょう

①システムを開発してお客様企業に納品する

「システムを開発してお客様企業に納品する」と言う事業は長年SIerの売上に大きく貢献している事業であると考えられます。「要件定義」「基本設計」フェーズは準委任契約で行い、「開発」フェーズは請負契約で行うと言う昔からある古典的なビジネスです。

過去には各お客様企業にフィットする大規模な基幹システムをスクラッチ開発するようなことが流行っていた時代ありました。大規模開発となると大量に人を投入して長期間かけてシステム開発を行うため大きな売上を上げていたはずです。
しかし、現在では何でもかんでも大規模にスクラッチ開発してしまおうと言う考えはほとんどなくなり、特殊なシステムでない限りは出来合いのパッケージソフトやSaasを可能な限り使用しようと言う流れが出来上がっています。

この時代の流れから考えると「システムを開発してお客様企業に納品する」という古典的なビジネスについては過去に比べて売上自体は縮小していると考えられます。

それでは今後、SIerにおけるこのビジネスは縮小の一途をたどるのでしょうか?
私はそうは考えていません。いくらパッケージソフトやSaasが広がってきたとしても、やはり隙間を埋めるためのシステムは必ず必要です。当面このビジネスが現状のまま変わらず続くでしょう。

近年急速にローコード開発、ノーコード開発が広がってきています。それでもこのビジネスはなくならないのか?と疑問に思った方もいるかもしれません。ローコード、ノーコード開発の拡大により、過去と比べて明らかにコードをゴリゴリ書いて開発すると言う仕事が減少しているのは事実です。
しかし、いくらローコード、ノーコード開発が拡大したとしても、お客様には元々の仕事があり開発業務をする暇などないと言う点、SIerには元々コードをゴリゴリかいて開発だけする人間はそんなに多くないと言う点から、SIerには大きな影響はないと考えられます。
ローコード開発、ノーコード開発による影響があるとすると従来のコードによる開発手法ではSESから10人程度の調達が必要だったと言うプロジェクトで、ローコード開発、ノーコード開発では5人で済むようになり、SES企業から調達する人数が減少する可能性はあります。そうすると結果的に、SES企業が縮小して行くことになると考えられます。

②お客様企業の既存システムの運用保守を代行する

納品が完了したシステムに対してお客様企業と準委任契約をして、運用保守を行うと言うのもSIerの売上に大きく貢献している事業となります。こちらも昔からある古典的なビジネスです。

このビジネスに関しても、隙間を埋めるシステムに存在が必要である限りは必ず運用保守が必要となります。そのためSIerの事業としては当面は現状のまま大きく変わることがないと考えられます。

近年、お客様企業においてビジネスのスピードアップを図るために内製化を推進していこうと言う流れがあります。もし内製化が進んだ場合、ゼロから開発までは内製化が難しいとしても、せめて運用保守は内製化されてしまってSIerの仕事がなくなってしまうのではないか?と考えられた方もいるかもしれません。
この点に関してもSIerには大きな影響がないと考えられます。現在の日本企業は容易に従業員を解雇することをしません。システムは常に新しく開発したり、廃止したりを繰り返しています。常々必要な人員は変化するのです。お客様企業の立場から考えると従業員は解雇が難しいので、可能な限り最低限の人数だけ雇用したいと考えているはずです。そのような状況を鑑みると内製化によって運用保守をお客様企業内の人員だけでまかなってしまうと言うことはとても困難です。
法律大きく改正されたり、社会に大きな影響を与える判例が出たりしない限りは現状は大きく変わることはありません。

③自社サービスを開発してお客様に提供する

どこのSIerでも大なり小なり自社サービスや自社製品を開発してお客様企業に販売する事業を行っています。①で記載したように、過去のように大規模なシステムのスクラッチ開発が減少したことをきっかけに各SIerは新サービスの開発を必死に行っています。
自身がオーナーとなって行う新規事業においてはどうしても当たり外れがあり、大きくヒットするか、全く売上に繋がらず徹底していくかは運や戦略次第です。
最近良く見るSIerのスタンス的にはベンチャー企業がやっていることをまるごと社内で立ち上げると言うよりは、独自の技術を持ったベンチャー企業に出資したり協業することで、自社の資本やノウハウと融合させて新しい稼ぎ頭を創出して行こうと言う動きが多く見えます。
SIerは比較的資金力があるため、SIerならではの戦略であると思います。

このように新しいサービスを開発する活動も活発に行っているため、仮に①②の売上が少し落ちたとしてもすぐにSIerの未来が危ぶまれる自体にはならないと考えられます。

まとめ

今回はSIerの現状の事業を元にして、未来や今後の動向と考えてみました。
現時点ではすぐにSIerが廃れたり、オワコン化することはなく、すぐに転職する必要があったり、何かがヤバいと言うことはなさそうです。今後、何らかのパラダイム・シフトが発生した場合にどのように事業構造が変化し得るのか想像してみることも楽しいかもしれません。

主なSIerの売上、平均給料などをまとめた記事(2022年 SIer売上高、営業利益調査、平均年収調査)もあります。転職など考えている方は参考にどうぞ






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